リビング・ウィル
2014年09月08日
リビング・ウィル(Living Will) ってご存知でしょうか?
これは、「生前に発効される遺書」のことです。通常、遺書は亡くなった後に発効されますが、リビング・ウィルは、生きていても何らかの事情で意思表示のできない状態になり、回復の見込みがなくなった時点で発効されます。
人間は最後まで自分の意思や判断能力を持って死を迎えるとは限りません。悪性腫瘍や、脳血管障害による植物状態、高度な認知症、または不慮の事故等によって高度の脳損傷を受ける可能性もあります。このような場合、ほとんどの場合がその回復が見込めない状態です。そのような「まさかの時」に積極的な延命治療をしますか?それとも延命治療を希望せず、平穏な死を希望されますか?という意思表示と考えていただければ良いかと思います。
患者さん本人の意思が確認できない「まさか」の場合、ご家族や医療者(医師)の価値観で治療が決められてしまいます。特に大病院や、救急医療の現場では患者さんの救命や、高度な医療を使命としています。意識を無くした患者さんが突然、救急搬送されてきたら、あらゆる手段を使って救命、治療するのは医療者として当然のことだと思います。しかし、医療技術の進歩により、回復する見込みが全くない状況でも生命維持装置によって命を保つことも可能となりました。それは患者さんにとって非常に大きな苦痛やストレスになる可能性があります。
具体的な延命行為としては、人工呼吸器、心臓マッサージ、電気ショックによる蘇生行為、高カロリー輸液、胃瘻などがあります。これらの治療の有無をあらかじめ文書として意思表示をして、望まない延命治療を行わないようにします。ちなみにアメリカは国民の41%がリビング・ウィルを表明している一方、日本は0.1%以下で法制化もされていないのが現状です。
医師は「患者の命を救う」ことを使命とされ、そのための教育を受けてきました。しかし、その患者さんが望まない苦痛やストレスを伴う延命を強要する権利は医師にはありません。それはもはや、「命を救う」ことの逆行にもなりかねません。私もこのようなリビング・ウィルを表明している患者さんの意思を最大限に尊重できるような治療を心掛けたい思っております。そのためには患者さんの意思表示が必要なのです。少なくとも成人の患者さんは、誰もが人生の最期を自分自身の意思で決める権利があるはずで、そんな大切な事を「おまかせ」では困るのです。
リビング・ウィルを実際の診療に取り入れている聖路加国際病院や、啓蒙活動を行っている日本尊厳死協会のサイトを紹介させていただきますのでご参考にして下さい。
参考サイト